私はどうして販売外交に成功したか

私はどうして販売外交に成功したか (Life & business series)

私はどうして販売外交に成功したか (Life & business series)

1964年に書かれたセールス本の古典です。現在セールス系の仕事にも片足を突っ込んでいるので試しに読んでみました。筆者は米国人のフランク・ベドガー氏。プロ野球選手から保険のセールスマンに転職し巨万の富を得たという異色の経歴の持ち主です。筆者はかの有名なデール・カーネギー氏とも懇意だったらしく、同書の執筆は彼に進められて実現したそうです。


内容はというと、現在の営業スタイル(特に日本)とはマッチしない部分はあるものの、販売の原則(らしきこと)がひたすら綴られています。同氏は「ベンジャミン・フランクリン氏の本を読んで感銘を受け、フランクリン氏が実践していたことを自分なりにカスタマイズして実践し続けただけ」といっています。やはりセールスという人間の本能に根ざした職業の本質は100年経っても変わることがないのでしょうか。同書には現代においても普遍的と思われる営業原則がまとめられています。

ドガー氏が主張する原則は以下の13個です。

  1. 情熱
  2. 秩序
  3. 他人の利害関係を考える
  4. 質問
  5. 中心問題
  6. 沈黙
  7. 誠実
  8. 自分の事業に関する知識
  9. 正しい知識と感謝
  10. 微笑
  11. 人の名前と顔を記憶すること
  12. サービスと将来の見込みに対する予想
  13. 販売を取り決める


上記を見ればわかるようにハッキリ言って "王道" です。これらの全てを高いレベルで継続すれば「まあ成功するよね」と納得せざるを得ません。同書は非常に参考になることが多かったのですが、ただ、これらの原則から成功勝ち取るには、ある程度読み手の能力に依存するような気がしました。
現在では情報網が発達し、思想や教育も高度化しているため上記に上げられている原則はほとんどのビジネスマンが(その仕事人生の過程において)理解していると思われます。ただ、それを限りなく "高レベルで""継続的に" 実行することが非常に難しいため、この部分で個々の能力差が出ると私は考えています。そして現代のセールスマンが求めているのは、これらの原則を "高レベルで"、"継続的に" 実行するための方法論であり、人生のどん底からの回復を決心した人のような強固な意思を必要とせずにそれを実現できるメソッドなのだと思います。
同書には原則は記されていますが、それを実践するための方法論までは言及されていません。まるで「そこは個々人がそれぞれで最適化すべきである」というスタンスを取っているかのようでした。そのような意味で私は「読み手の能力に依存する」と感じました。


とはいえ原則論自体は非常にすばらしいものです。それらの中で私が印象に残ったもののみ紹介します。

情熱

ドガー氏は「情熱を持って望むだけで、私の仕事に対する成果と周りからの評価が一変した」と書いていますが、これ非常に納得です。考えてみれば当たり前なのですが、"仕事に臨む姿勢" の重要さを改めて痛感しました。


秩序

「自分の行動に秩序を持たせる」ということです。これを高度なレベルで継続するのは非常に難しいのですが、同書の中ではこれが最も大切であると主張されていたような気がします。


質問

セールを成功させる秘訣は「相手の話をよく聞くことだ」としています。そして「例え相手と意見が違っていても、質問によって相手の意見を誘導し、あたかも相手が元々自分と同じ意見だったかのように納得させることも可能だ」ともいっています。私は聞き上手な方だと自負していましたが、到底このレベルには達していません。


人の名前と顔を記憶すること

これは私が最も苦手としていることですが、ベドガー氏、カーネギー氏、フランクリン氏が声を揃えてこういうからには実践しないわけには行きません。より本質的には「その人に興味を持つこと」なのですが、私にはこれが欠けていると痛感しました。



いろいろ書きましたが名著には間違いありません。セールスで行き詰った時に再度読めば新たな発見がある1冊だと思います。