円高の正体

円高の正体 (光文社新書)

円高の正体 (光文社新書)

最近、やや円安に振れていることを受けて、「なんで円安なんだろう? そもそも円高になるメカニズムを知らないな・・」と思って読んでみました。今まで為替関係の本は何冊か読んできましたが、同書のおかげでようやく為替レートが変更する仕組みが理解できた気がします。


同書は2012年1月に第1刷が発行され、同年3月に第6刷が発行されていることから、短期間でかなり売れていることがわかります(おそらくベストセラーといっていい)。同書の主張と論理展開を見てみると、

  • 円高は現在の日本にとって悪でしかない
  • TVや他の為替関連の書籍で展開されている円高性善説はまったくの誤り。それは過去の経済データーで明らかに証明できる
  • 為替レートを変化させるパラメーターはいろいろあるが、基本的には自国と他国の通貨流通量の比率によって決定されている
  • 為替の変化で最も着目すべき指標は『予想インフレ率』。中央銀行が自国のマネタリーベースをコントロールすることで、この値を増やしたり減らしたりできる
  • その国の通貨発行量をコントロールできるのは同国の中央銀行のみ。よって金融政策によるマネタリーベースのコントロールでしか円高を阻止することはできない


中でも私の中で新鮮だったのは、「為替レートは自国と他国の通貨流通量の比率によって決定されている」という事実です。同書にも書かれていますが、一般的な円高の原因は「経済が堅調と判断されている国の通貨は買われて高くなる」とされています。それはそれで正しくはあるのですが、著者の安達氏によると「それよりも通貨の流通量の比率が与える影響の方が遥かに大きい」とのことで、「そしてそのことは過去の経済データーが証明している」と仰られています。これには非常にビックリしましたが、説明を読むと納得せざるを得ませんでした。


今後、国の年金があてにならないとなると、自分で資産を運用していくしかないのですが、実際にそれを行わなければならなくなった時の判断基準として非常に参考にる本でした。また、私が世界企業で働くようになった時にも、考え方のベースになってくれる気がします。