小倉昌男 経営学

小倉昌男 経営学

小倉昌男 経営学

「経営の教科書」と呼ばれていて、多くのビジネス雑誌で推薦されていたので読んでみました。大変面白かったですが、『教科書』と呼ぶほど体系的ではなく、どちらかと言うと「ある程度経験を積んだ経営者が行き詰まりを感じた時に読む本」という意味での経営者の教科書だと思いました。


内容はというと、ヤマト運輸の2代目小倉昌男氏の経営経験がまとめられており、宅急便サービスを日本に普及させるまでに直面した様々な問題とその解決の思考がまとめられています。上述したとおり体系化はされていないのですが、とにかく内容が実践的で多岐に及んでいるため、出てくる問題様々な問題の解決エピソードを読んでいると、「なるほど」、「その手があったか!」と思うことばかりです。もしかしたら、その意味では体系化されている本よりもよっぽど教科書的なのかも知れません。


同書からわかる小倉氏のビジネス思考は、とにかく良心の高さとスケールの大きさに富んでいます。当時「不可能」といわれていた個人宅配市場の創出をサービス至上主義の下に執念で作り上げたその熱意には尊敬の念を抱かずにはいられません。またその上で個人宅配市場の収益性の確からしさを(早い時期から)確実に察知し、いち早く同事業に参入したビジネス感度の高さもも見逃せないと思います。同書を読んでいると、経営に対する考え方が非常に日本的だなと感じますが、同時に今世界からお手本にされている『ジャパン・サービス・クオリティ』の考え方がひしひしと伝わってきます。


内容が多岐に渡っており、特定のポイントにフォーカスしてサマリを書くことが難しいので、ざっくりとした書評になってしまいましたが、『教科書』と呼ばれるだけはある、読み応えのある本でした。ただし、社会人経験が少ない若者や、駆け出しの経営者にとっては学びの少ない書籍かもしれません。読み手を選ぶ作品でしょうか。