ビジネスモデルを見える化する ピクト図解
- 作者: 板橋悟
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2010/02/19
- メディア: 単行本
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大きなくくりでいうとHowTo本であり、ピクト図自体が新しい概念なので書評が書きづらい本です。なので今回はピクト図そのものについての感想を書きたいと思います。
ピクト図はビジネスで一般的に重要とされている「人」、「モノ」、「金」を記号化し、それらを矢印によって繋げることでビジネスの流れを可視化するメソッドです。古来(特に日本では)この3つの動きを知ることがビジネスにおいて重要とされていたため、これらの3要素をシンプルに表現することにこだわった手法だなと感じました。世の中にある優れた考え方の多くはシンプルを旨としており、非常に覚えやすく使いやすことがその特徴の一つとしてありますが、ピクト図解もそれに習ったためか、非常にシンプルな手法としてまとめらています。
試しに私も練習のためにいくつかの既存のビジネスモデルを図式化してみました。以下にその感想を列挙します。
- 商売の基本となるような「物を仕入れて売る」という概念自体は分かりやすく表現できる。
- ステークホルダーが増えてもそれらをすっきりとまとめることができるため分かりやすい。
- ただし、現在のビジネスモデルは複雑化、精密化したものが多いのでそれらを表現しようとするとかえって図がごちゃごちゃして分かりづらくなってしまう。
- サービスと物販の区別はノート(注釈)で記載するしか無いため、そのピクト図をよく読み込まないと表現しているビジネスモデルがなんなのかを把握できない。
- 時間の概念が弱いため、投資/回収における「人」、「モノ」、「金」の出入りのタイミングを把握することが困難。
最初はなかなか良いメソッドと思いましたが、使っているうちに最後の2つは致命的な欠点ではないかと感じ始めました。家電量販店がポイント還元で顧客を囲い込もうとしているケースや、5年間保証を売りにしているケースでは極めて可視化しづらかったのです。もしかするとこのようなサービスモデルは「商売の本質とは異なっているから捕らわれない方がいい」とのスタンスかも知れませんが、ビジネスが高度化した昨今ではそれらが差別化要素ともなっているため無視できなくなっています。これらの複雑なケースを表現する記法が "オプション" として提供されていると良いなと感じました。
総評すると、ピクト図は素人の方がビジネスモデルの全体を掴むためのツールとしては有効ですが、ビジネスを提供する側で第一線で働いている方には物足りないのではないかと感じました。今後UMLのようにバージョンUPに伴い表記法が進化していくことを期待します。