CMCで変わる組織コミュニケーション 企業SNSの実践から学ぶ

CMC(Computer-mediated Communication)組織活動について研究、分析している書籍。筆者は名古屋大学 情報戦略室の教授の方です。主に電子メール、SNSWiki、Blogなど現代型のCMCメディアについて取り上げ、それらのもたらすベネフィットや課題について詳細に分析が行われています。

研究者の方が書かれた書籍なので、正直あまり実践的ではありませんでした。どちらかというと理論よりで、CMCの「必要性」や「有効性」についての分析/説明に多くの時間が割かれており、「CMCメディアにを最も有効に活用するにはどのようにすべきか」という現場が最も知りたい部分までは述べられていませんでした。私はITプロジェクトにおけるCMCの有効性を既に身をもって体験してるため、それらの「必要性」、「有効性」については読むまでも無いと思っていました。しかし、筆者の考えるそれらの分析を読んでみると改めて納得させられる内容、観点であり、CMCの持つ多面的なパワーと影響力を再認識させられました。

第5章は同書籍の本論で、
5.1 従来の知識創造モデルの論点
5.2 仲介知に基づくデジタル知識流通モデル

の2つの違いを明らかにしています。これは簡単にいうと以下のとおりです。


そもそも知識には、個人が所有しているcloseの知識である「暗黙知」と、広く一般化されている「形式知」が存在し、暗黙知形式知に変化させるのが、組織活動における知識拡大上の課題とされています。従来型の5.1では個人→グループ→組織で知識を形式化していくしかありませんでしたが、デジタルメディアの登場によって、暗黙知形式知を繋ぐ存在である「仲介知」が最近存在してきています。仲介知は別名メタ知識とも呼ばれ、そ自身では形式知では無いが、暗黙知形式知に昇華させる可能性を持った知識のことで、twitterのRTなどが仲介知の代表格ではないかと思います。デジタル型の知識創造は、この仲介知を広く活用することによって、その活動をより促進させることができると思われます。

また、この3つの知識モデルがそれぞのどのように変換されるかについても説明されています。この3つは以下示す9つのアクションによって変換されつつ、知識を拡大/蓄積させるとのことです。


洗練化、公開化、協働化、断片化、共鳴化、共同、表面化、内面化、連結化


これらについては同書に、状態モデル図や変換プロセス図なるものが掲載されていて、かなり興味深かったのですが文字で説明するのが困難だったので割愛します。。代わりといっては何ですが、書籍の図を撮影したものを以下に配置しておきます。


今回は学術的な書籍だったのでBlogの書評でその内容や評価をお伝えするのが難しく、内容の抜粋を説明しました。「CMCの導入を考えているが、なかなか組織の理解が得られない・・」という形は是非この書籍の第5章を読み、皆さんに共有してみてください。きっと話が前進すると思います。

  • CMCについては知っているいるけど、その有効性についてちゃんと理解していない
  • CMCの効果については体感しており、それらを組織に拡大させたい


という方にはおすすめできる書籍です。ただし理論よりなので若干読むのがきついかも知れません。