リーダーの人間力 人徳を備えるための6つの資質

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PMIJから献本を受けたので読んでみました。筆者は心理学者及び病院経営者のヘンリー・クラウド。訳者はPMIJ SummerFesta2010でも講演された中嶋先生です。ちなみに中嶋先生はPMBO第4版の訳者の一人でもあり、多数のプロジェクトマネジメント系の方を、執筆/翻訳されています。

書籍の内容を簡単に言うと、「成功を収めるためには、能力だけでなくインティグリティ(人格統合)を備えて備えていなければならない」を主張しています。『インティグリティ』は適切な日本語がなかったため、あえてカタカナ語を使用されているそうです。タイトルでは分かりやすさを優先してか、『人間力』となっていますが、日本語でいう『人間力』とはややニュアンスが異なると思います。インチグリティを適切に説明するとしたら、「道徳観が高く、信念に溢れた人間性」でしょうか。

よく、人材採用/登用の世界でも、「人間性を取るか、実績を取るか」が議論になることがありますが、同書では「インティグリティを備えていない人は結果を出すことはできない」とまでか書かれており、インティグリティが実績に先立つものであることを匂わせています。

同書のポイントは2点で、
1. インティグリティは自身の経験と努力によって時間をかけて統合されていく。
2. インティグリティを備えるには以下の6つの資質(≒能力)を鍛える必要がある。

1) 本当の絆を結ぶ能力
2) 現実と向き合い活動する能力
3) 成果を上げ、物事を完結する能力
4) 逆境を引き受け、向き合い、処理する能力
5) 成長、発展を求める能力
6) 自己を超える能力

やはり興味深いのは2.でしょうか。「これら1)〜6)の能力を日々鍛え、1.とすることで、自動的に実績を積むことができる」というのが、同書籍で一貫して展開されている主張です。そして書籍の最後で、「"インティグリティの向上と成功の正の連鎖" を生み出すことを目標としてほしい」と締めくくっています。

1)〜6)どれもが、高度なインティグリティ(道徳、信念など)を持つ上で必要な能力として非常に納得感があります。しかしながらこれらは同時に、高いレベルで継続して保持することが非常に難しくもあり、インティグリティの構築のハードルの高さを伺わせます。個人的感想ですが、『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』で語られている「第五水準のリーダーシップ」を備える経営者はまさにこのインティグリティを持っているような気がしました。

本としては若干難解な部類に入りますが、流行りのビジネス書のように、言いたいことを無理やり長く引っ張って書いているようなダラダラ感はなく、インティグリティの必要性や定義、それを身に付けるにはどうすればいいか? ということが簡潔に書かれています。個人的にはマネージャーや経営者にお薦めの本で、人選びに迷った時や、「自分に(人間として)何が足りないか」という問を持った時に読んでほしい一冊です。