急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則

急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則 (SB文庫)

急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則 (SB文庫)

モノや噂が広まっていくプロセについて分析した本です。筆者は元ワシントン・ポストの編集者で、現在は雑誌『ニューヨーカー』のライターだそうです。自らブームを起こすにはどうしたいいのかが知りたかったので、購入してみましたが、参考になったようなならないような不思議な感触でした。

同書によると噂やブームが広がるにはティッピグポイントという、「ここを超えれば、急激な広まりを見せる」というポイントが存在するのだそうです(ただしそのポイントの値は広まる対象によって異なりますが)。ティッピングポイントを超えるには、以下の3つの条件が必要です。


1. コネクター、メイベン、セールスマンがそのバイラル対象にタッチしていること
2. バイラル対象自身に『粘り』があること
3. バイラルに都合の良い外部環境が整えられていること


1. は「感染力の高い人にそのことを伝える」という考え方で、一般的にはキャズムの理論として広く認知されています。同書籍では「イノベーター」や「アーリーアダプタ」をより一般的な3種類の人間として再定義しています。コネクターは人と人とを繋ぐことに喜びを見出す人、メイベンはある対象について深い知識を持つこと、セールスマンはその知識を人に伝えることに喜びを見出す人です。ある対象を感染させたい場合は、これらの人に積極的に働きかけることが重要という理屈なのでこれはわかりやすいです。


2. はそもそもそのバイラル対象が人の心(もしくは体)に粘着する性質を持っている必要がある、という考え方で、例としてタバコのニコチンや幼児が興味を持つシュチュエーションなどが挙げられていました。これも改めて言われるまでもない前提条件の1つですね。


3. が難しいのですが、簡単に言うと「人間は自分の思っている以上に環境に左右されやすい」ということです。例えば2000年代に入ってからのN.Y.地下鉄の犯罪率の低下は、構内の落書きを徹底的に消したことに起因していたり、150人x5の集団と、同数の集団1つでは前者の方が噂の伝播が早い事などが挙げられます。理屈的には分かりますが、その環境に対する具体的な定義や実例が十分でないので、「そんなもんかな・・」という気がしました。これについては納得感が不十分な印象です。


内容的に少し難解なので読み解くのに少々時間がかかるかも知れません。マーケティング理論の初心者は、同書と「キャズム」を同時に読むと勉強になるかも知れません。若干消化不良感があるもの、面白い本と言っていいと思います。