ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則(※1)』の続編と思われていますがかなり毛色の違う本です。※1は厳格な企業調査によって五十年以上業績を上げ続けている偉大な企業の共通点を明らかにすることでしたが、今回の『ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則』は「そこそこ良質な企業が、偉大な企業に飛躍するにはどうすればいいか?」という疑問に※1と同様の調査をもって明らかにしようと試みています。ちなみに筆者は※1と同じくC.コリンズさんです。(※1は共著でしたが今回はピンで書かれています)

同書を要約すると、GOODからGREATに秘薬した企業が持ち合わせていたのは以下の点だそうです。

1.CEOが第五水準のリーダーシップを持つ
2.適切な人をバスに乘せ、そうでない人を降ろす
3.ストックデールの逆説を唱える
4.ハリネズミの概念を持っている
5.規律の文化が存在し、じっくりと弾み車を回すことができる

1.は同書の造語ですが、「商業人としての意志の強さと、個人としての謙虚さ」を兼ね備えているリーダーの事だそうです。飛躍した企業は転換点において殆どがこの第五水準の資質を持ったCEOに率いられていたとのことです。

2.は「まず人を選び、何をするかは後で決める」という文化のことで、飛躍した企業はまず人選びから入るのだそうです。なぜなら適切な人であればどんなに方向性が変わっても柔軟に対応し良い結果を残せるからだとか。

3.ストックデールの逆説とは、厳しい現実を直視しながらも最後まで決して希望を失わない考え方のことで、ベトナム戦争ベトナム軍の捕虜となった、米国の軍人ジム・ストックデールさんにちなんでいます。ちなみに偉大に慣れなかった企業の場合は現実を直視せず自意識過剰に陥ることが多かったそうです。

4.ハリネズミの概念とは自分の(唯一の)強みを認識しそれを重視する戦略を取ることです。これの対照的なのは「キツネの概念」であれこれ考え過ぎることを指します。企業においては自社の強みを認識しそれを市場に適応させることが重要であり、ころころ戦略を変えるのは愚の骨頂としています。

5.「偉大な企業は一夜にして出来たのではない」ということです。重たい石の車を押す場合、最初は重くて少ししか動きませんが、逆に勢いが付くとそれ自身の重さで勢いを得ることに例えています。飛躍した企業は4.にちなんだ活動をじっくりとやることで偉大になったということですね。


前作の『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則(※1)』も非常に得るものが多い本でしたが今回も同様でした。素晴らしいのは前回同様、同書の理論が詳細に調査されたデータの裏付けによって成り立っている点で、決して筆者の独善的な考えで書かれたものではないという点です。それは歴史が示す厳然とした事実であり、一定の成功パターンであることを意味しています。


私はブログを書いていますが、他者のブログを読んでいていつも思うのは「何の根拠をもってそれを主張してるのだろう?」という点です。「ブログなので根拠なんか無い」と言われればそうかも知れませんが、ある程度持論を押し通すのであれば、同書のように説得力を持った根拠が欲しいと思います。そういう意味でも私に刺激を与えてくれた一冊でした。

特にベンチャー企業に属している人にはおすすめの本です。