イノベーションのジレンマ ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)

全米でベストセラーになった原著、『The Innovator's Dilemma』の増補改訂版。筆者は研究者でもありビジネススクール教授のクレイトン・クリステンセン氏。豊富な社会人経験を持ち、(年齢的に)比較的遅い時期に学問の世界に入られたそうです。


Wikipediaによると、「イノベーション(innovation)とは、物事の『新機軸』、『新しい切り口』、『新しい捉え方』、『新しい活用法』(を創造する行為)のこと。」とありますが本書でいうイノベーションは技術的なイノベーションを指します。本書のコンセプトは「技術的なイノベーションが出現した際に実績のある優良企業は何故そのイノベーションを捉えることができず王者の座から陥落してしまうのか?」を解き明かすことにあります。


良書と言われていたのでいつか読みたいと考えていましたが、私の人生のこの時期に本書に出会ったのは非常にベストなタイミングであったと思います。本当に素晴らしい書籍でした。この感動は「ロングテール」以来でしょうか・・ かなり難解な本でしたが久しぶりに120%満足しました。


本書に書いてあることを掻い摘んで話すと以下です。


イノベーションには持続的イノベーションと破壊的イノベーションがある。
・実績のある優良企業は健全な経営を持続していれば持続的イノベーションを(自然と)追随し、結果を出すことができる。
・危険なのは破壊的イノベーションで、健全な経営を行えば行うほど破壊的イノベーションに乗り遅れてしまう。
・それらを示す様々な事例と根拠の紹介。
・それは何故か? そうなってしまう本当の理由は何なのか?
・それを避けるにはどうしたらいいのか?


経営に興味がある方は上記のリストを見ただけで非常に惹きつけられるのではないでしょうか? 健全な経営を行えば行うほど破壊的イノベーションを捉えることができないという事実。同書はこのジレンマに真っ向から回答しています。あとがきに「同書はビジネス書籍の名誉ある賞を多数受賞した」と書いてありましたが十分に納得です。(取らないわけが見つかりません・・)


あまり語ってしまうとネタバレしてこれからこの本を読まれる方の楽しみを奪ってしまうのでこの程度にしておきます。


書籍としては難解な部類に入るため意外と読み進めるのに時間がかかると思います。私の場合は1日1,2時間で2週間ほど費やしました(私のペースにしては比較的長めな方です)。またビジネスに慣れてらっしゃらない方や興味のない方には少々退屈な本かも知れません。経営に興味が出てきた30代半ばぐらいの方に絶賛お薦めします。