クラウドコンピューティング―技術動向と企業戦略

クラウドコンピューティング―技術動向と企業戦略

クラウドコンピューティング―技術動向と企業戦略

シリコンバレー・テクノロジー・リサーチャー」という団体が書いた、クラウドコンピューティングの(執筆時点の)技術動向のまとめ本です。クラウドコンピューティングに関する最新情報が綺麗にまとめられています。ちなみにこの本でのクラウドコンピューティングの定義は「サービスやアプリケーションを物理的なリソースから切り離して抽象化し、オンディマンドのレイヤーとして提供するもの」とされています。当たらずとも遠からずといったところでしょうか。(この表現は2008年8月に開催された「WEB2.0サミット2008」においてシスコシステムCTOのパドマスリー・ウォーリア女史の言葉だそうです。)


クラウドの基本である、SaaS、PaaS、IaaSの説明をはじめ、クラウドの技術基盤である仮想化技術の歴史や最新動向についても触れられており、クラウドの上から下まで一通りは押さえてありました。またこの本の特徴は技術動向を語るだけでなく、

・その技術を生み出した人がどの企業出身なのか?
・どういう経緯で転職・独立しその技術を世に送り出したのか?
・その企業がどのようにM&Aを繰り返したのか?
・資金調達の方法は?

など人間と企業にフォーカスして書かれているところです。単なる技術動向が書いてある本の場合は技術者のみが興味を示しがちですが、そのような人間味のある内容まで踏み込んで書かれていると技術者意外の人も興味が湧くので非常に良いと思いました。


本書で特に驚いたのはSaaSの技術的・サービス的な進化でした。掲載されている多くの事例を読み正直、「ここまで進んでいるのか?!」と驚嘆しました。しかもほぼ無料!クラウドコンピューティングが破壊的なイノベーションであることを改めて実感しました。(このような情報はWEBサイトをしっかり見ていれば拾えはしますが、意外と書籍経由で知ることも多いのですよね・・)


若干内容が技術寄りなので技術者には薦められる書籍だと思います。非技術者であっても「クラウドの根幹技術をきちんと理解したい!」と考えている方にはお薦めします。