「ワタシが主役」が消費を動かす―お客様の“成功”をイメージできますか?

ハー・ストーリー代表 日野佳恵子さんが書かれたマーケティング本です。ハー・ストーリーは知る人ぞ知る女性専門のマーケティング会社で、以前日野さんが書かれた「クチコミュニティ・マーケティング」を読んで以来感銘を受け、日野さんもハー・ストーリーも常々注目していました。日野さんの書かれる本の特徴(=ハー・ストーリーさんの特徴と言っていいかもしれません)は、私の主観では、

1) 消費者目線が徹底していること
2) 利潤追記型ではないこと

の2点であると思います。1) は当たり前のように見えますが、普通のマーケティング本や事業戦略本は「売り手目線」で書かれており、「いかに買わせるか」、「いかに会社を強化するか」、に主眼が置かれていると思います。しかし日野さんの場合は、「いかに消費者を巻き込むか」、「生活を豊かにするとはどういうことか」、という視点で書かれており、消費者としてもビジネスマンとしても非常に共感が持てます。2) も 1) と本質的には同じです。私も21世紀に入ってからの「人々の価値観の変化」を肌で感じていますが、これからは消費者主導でマーケットを作らないと世の中がいい方向に変わらないのかなという気持ちがあります。ただ利潤を追求するのではなく、「世の中と関わりつつビジネスをやっていきたい(ある意味『社会起業』?)」と考えている方にはお勧めの1冊です。

ただ1点不満だったのは、書籍の内容が成功体験に偏りすぎていたことでしょうか。「ハー・ストーリーでこんなことをやってこんなふうに成功した」という内容が大半でしたが、その裏には数々の苦労や失敗もあったはずです。それを語らずに成功ばかり並べると、日野さんの言うとおりやれば全て上手くいくような錯覚に陥ってしまう懸念があります。それでは普通の成功体験本と同じになってしまい、せっかくの本書の持ち味が生かされなくなってしまう気がしました。

なんてことを思いながら次回の作品を楽しみにしたいです。